子供等が幼い頃、一家揃って東京上野の国立西洋美術館の「バーンズ・コレクション」展を見に行った。ついでに一度位は新幹線に乗せてやりたいと云うささやかな親心もあって、当日39度の熱を出してしまったもののいたって元気そうな娘を気遣いながら、強引に出掛けて行った。
9時半には美術館に到着。すでに長蛇の列。しぶしぶ最後尾に並ぶ。やっと当日入場券を買って、再び入場待ちの列に並ぶ段取りで、じっと我慢を強いられた。並ぶことが嫌いなみのる君にしては珍しかったが、子供を従えた親の責務を果たしていただけさ。カミサンにブツブツ日本の貧相な文化事情をこぼして憂さを晴らしていた。小学生だった子供達は物珍しそうに辺りを観察したり、カミサンとお喋りに夢中になったり、39度の熱にも動じない娘も忍耐強かった。
2時間待ちの末、やっと館内に入ったが、当然、中も大混雑。ルノアールもセザンヌもモジリアーニも黒山の後ろから眺める程度。これでは、まるで雑踏の繁華街を歩いているようなもので、鑑賞も感想もない。疲労感のみだった。ひどいものだ。期間中100万人を超える入場者数を数えた由だが、お祭り騒ぎを誇って何になる。子供等が元気だったので救われたけれど、娘の熱が高じて倒れていたら悲惨な結果になっていたと思う。今にして思えば無謀極まりない美術鑑賞だった。
館内で昼食後、御茶ノ水に出て両親が通った学校等を見て回ってから、本屋に行きたいと云う息子の希望を叶えて三省堂に立ち寄ったが、子供等は目を輝かせてあちこちを飛び回っていた。美術館より、こちらの方が子供等には有意義だったか知れない。親の財布を当てにして怖いお話の本を買い求めたが、午前中の難行を労わった親のサービスと云うところさ。
その後、みのる君は毎夏美術館で入手したバーンズ・コレクションをプリントしたTシャツを着ていた。これも情け無い日本の文化事情の一端さ。
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