長髪時代
釘打ちのアルバイトに精を出していた頃、みのる君は一年間も伸ばし放題の長い髪を後ろで束ねていた。今では煩わしくていかんけれど、当時は気にならなかった。社会も容認していたし…。いや、きっとヒンシュクを買っていたのだろうと思うけれど、そんなモンは無視していた。無視出来る根性もあったのだろうな。それが、いつの間にか「今時の若いモンは…」と云う台詞が身に付いてしまった。世間体を無視出来なくなった年頃かも知れない。鼻の下に髭を生やしていた時期もあった。まだまだ社会の目が厳しかった頃で、取引先に嫌な顔をされたこともあったが、しばらくは平然としていた。
80年代初頭の竹の子族の出現辺りから世間体と云う「良識」が崩れ出したのかも知れない。以後、奇を衒う身なりが世間を闊歩し、良識も規範も教養も影を潜めていってしまった。きっと、連中に範を示した長髪組にも責任の一端はあるのだろうな(責任を押し付けられても困るけれど。若気のいたちごっこさ)。その頃、借金返済で首の回らなかったみのる君には無縁の世界に見えた。何だありゃと眉をひそめていたっけ。しかし、そう云いつつも週末は飲み屋でおだをあげていた時期でもある。
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